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現場勤務の思い出53-従事した建物のその後 [建築施工]

筆者は40年前に建設会社に入社して2つの現場に従事した。そしてその後はずっと管理部門の技術部署に勤務し、退職した。現場での勤務は約4年で丁度1/10の期間である。建設会社だから、ずっと現場勤務の人の方が多いのは当然で、建築の場合は平均すれば工期は1年と少しだから、30位の建物を作っている。

その様な現場一筋の人に比べると筆者の経験は比較にならないが、筆者にとっては2しかないからその建物がどうなったかはずっと気にかけていた。結果としては最初に従事した建物は今も使われており、何かの拍子にテレビに映ることがあり、懐かしい思いをする。2つ目の建物は4年前に解体され、今は新たに高層の事務所ビルに生まれ変わった。

最初の建物は当初は貸事務所のビルであったが、或る企業が本社ビルとして購入し、5年前まで使用していた。約35年使ったのだが、その間には2回かなりの改修工事を経ている。そして今度は医療関係の用途に変更された。事務所ビルが病院になるとは思いもよらないことであった。

事務所ビルではあったが、高さ制限で階高が低く、天井高さは今の事務所ビルとしては低いので、本社ビル機能として限界に来たのであろう。しかし病院であれば天井高さは問題なく、内装を作りかえれば十分病院として生まれ変わったのであろう。今でいえば「スケルトンインフィル」だったわけである。又、事務所ビルとしては珍しく、敷地が広く、緑が多かったことも病院として良かったのだろう。

2つ目のビルは東京でも有数のオフィス街にあって、外装の塗り替えなどはしていたが、今のOA環境にはやはり天井高さは低く、又、スパンが12mで廊下の幅を引くと事務所としてはやや狭いのである。周辺の建物が建替えを進めたこともあって、大手不動産会社が購入して建替えとなったのである。
元施工と言う事で筆者の勤める会社が建替え工事も請け負ったので、現場担当者が筆者に解体工事で参考となりそうな資料は無いかを尋ねてきた。幸い幾つかの施工要領書が家に置いてあったので提供できた。

筆者は鉄骨工事と耐火被覆工事を担当したのだが、解体に当たって鉄骨の溶接部の検査が行われた。部分的に かなりの仮設荷重が掛るからである。当時溶接の検査を担当していたので、溶接欠陥は無くて幸いであったし、すこし自慢にもなった。

耐火被覆工事では湿式吹き付けの耐火被覆材の厚さが、規準より全て約10㎜厚く、廃棄物処理に費用が掛ったと、担当者にこぼされた。これは現場に迷惑をかけたと言うべきか、自慢してもいい事なのだろうか?

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現場勤務の思い出52-竣工式 [建築施工]

竣工式は現場社員にとっては晴れの日であり、竣工に漕ぎつけたことの安堵感から、工事期間中の苦労が報われる日である。一般に竣工式は施工者が段取りを行うが、費用の多くは建築主が出す場合が多い。なんといっても自社のお披露目なのである。

竣工式は多くの場合、神式で行われて参列者が玉ぐしを奉てんする。建物を作ることは建築主に取って大きな「設備投資」だから、この事業が成功するように神様に祈るのである。建築主の代表である社長以下役員、担当者と施工者の役員(大規模現場では社長や会長)であるが、建築主の関係者として政治家等が招待されることもある。

式典の後は「直会」として関係者のパーティーである。この時は堂々と昼間からお酒を飲むことが出来る。流石に飲み過ぎるような人はいないが、体質によっては赤くなるから、はたから見ると建設業者は昼間から大酒を飲むと誤解される。「直会」は儀式の一部であり、飲むのが目的ではない。

この現場では400人くらいが参列し直会を行った。筆者は会場係で参列等はしなかった。現場社員で参列したのは役職者だけで、他の先輩社員も駐車場係や受付、手水、お土産などを担当した裏方であった。お土産には建設新聞に掲載した本建物の特集記事が入っている。見開きの4ページの新聞である。

竣工式の次の日には建設に従事した関係者の慰労パーティーが開かれた。これは現場(ゼネコン)の費用で行われ、現場社員と協力会社の幹部や現場担当者が主であって、建築主、設計者の担当者、ゼネコンの関係部署も招待した。参加者は700名になった。

筆者は慰労パーティーでは横断幕を描いた。キャッチコピーをどうするか幾つか案を出して、所長に選んでもらった。そしてなんとパーティーの最後の締めの音頭を筆者がすることになった。締には、1本、2本、3本閉めとあるが、各々「物事の最初に行う」「お終いに行う」「お祝いの席で行う」と言われている。

2本締はまず行われなくて、1本締は一回の手打ちで、飲み会で周りに迷惑をかけないから、かなり行われている。しかし本パーティーでは当然3本締であった。所長が筆者を紹介してくれて、音頭をとることが出来た。700人の手締めは壮快で、筆者の生涯の思い出になった。

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旧庁舎そろり15m、解体せずそのまま移動-旧明あきら村役場庁舎 [建築施工]

津市芸濃町林で9日、国登録有形文化財「旧明あきら村役場庁舎」の移設工事が行われた。建物を解体せずにそのまま移動させる曳家(ひきや)工法を用いた工事。重さ約50tonの建物がレールの上をそろりそろりと移動していく様子を住民らが見守った。

1916年に建築された同庁舎は、木造2階建て寄せ棟造り、延べ床面積約340m2。上げ下げ窓や張り出した玄関ポーチ、その2階部分をバルコニーにするなどの洋風デザインが特徴で、明治期と大正期の趣を残している。

2006年に国登録有形文化財となったが、老朽化が進んでいることから津市教育委員会が今年度、改修工事に着手。地域住民の文化、交流施設として整備し、来年9月にオープンさせる予定だ。この日は、油圧ジャッキ18基で建物を持ち上げ、レールに乗せてワイヤで引っ張り、約50分かけて新しい土台の手前まで約15m移動させた。建物は今後1週間以内に土台に載せる予定という。2017/12/10 読売

レールの上をゆっくり移動する旧明村役場庁舎.jpg

写真-1 曳家工法レールの上をゆっくり移動する旧明村役場庁舎

曳家(ひきや)工法は筆者も何度か検討したことがあり、幾つか実施してきたのでこの報道は懐かしい気持である。何しろ曳家工法は概略新築工事の半分くらいのコストが掛る為、余程の事情が無ければ採用されることは無い。その為この工法を行う業者を筆者は1社しか知らない。

国登録有形文化財だそうであるが、報道写真で見る「旧明村役場庁舎」は筆者にはその様な文化財には見えなかった。しかしネットで調べると文化庁のHPに写真が載っていたのが下の写真である。この写真からは確かに時代を感じさせる建物なのだろうなと思わせる。

旧明村役場庁舎.jpg

写真-2 旧明村役場庁舎(文化遺産オンライン)

旧明村役場庁舎は1916年に建築されたのだが、大正時代の洋風建築が地方の村役場であったことに驚く。明治維新から60年も経っていないのに、地方の町役場なのである。洋風とはいえ基本は日本の木造建築であり、瓦屋根部分は日本の気候風土に適したものなのであろう。

ところで曳家工法であるが、報道では新しい基礎の上に載せるために採用されている。建物はかなり傷んできて改修工事の一貫なのであるが、想像するに木造建築の場合最も傷みやすいのは基礎部分なのである。日本は湿気が高い為、土台の木材が腐朽し易いのである。

コンクリートの基礎(多分布(ぬの)基礎)の上に並べる土台木材が腐朽してしまっては、その取り換えは中々難しい。現状位置での取り換えもできなくはないが、曳家工法が可能な隣地スペースがあれば、新築の強固な基礎が出来る。おそらく新築の基礎は湿気対策として高さを既存より高くしているであろうし、全面コンクリートの基礎(べた基礎)としているのだろう。

又、改修は他に内装や設備も行うだろうが、「耐震補強」も行われることだろう。写真-2を見ると2階は窓が小さいが、1階の窓は大きく壁が少ない。屋根が重厚な瓦で重いから耐震補強は重要である。

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現場勤務の思い出51-1階の仕上げ工事は大変 [建築施工]

現場管理は一般にQCDSEといい、品質、コスト、工程、安全、環境管理のことである。どれ一つとっても大変であるが、工程管理は上手くいかないと他の全ての管理に影響する。即ち突貫工事となって、無駄なコストは掛るし、安全上も問題で、品質も低下する。環境管理的でもきちんと分別が出来ず廃棄物が多くなる。

その為工程管理の手段としては先ず工程表の作成が必要である。工程表は簡単なバーチャートとフローチャート(ネットワーク)があり、今ではフローチャートが主流であり、作業の繋がりを明確にし、又、作業時間を決める際に必要な機械や作業員、機械台数を検討して作成する。

そして重要なのが「クリティカルパス」である、これは建築には多種多様な作業があり、作業が繋がってフローとなる。フローの中でどれが最も余裕のない、即ち重要なフローがクリティカルパスである。クリティカルパスにあるどの作業も、1日遅れれば竣工が遅れることになる。従ってクリティカルパスの作業には特別の監視が必要なのである。

ところで一般には高層ビルでは最上階の仕上げ工事が最も遅く取りかかることになるが、実際には1階の施工が送れることが多い。1階は作業用動線として使われるからで、どうしても後回しとなってしまう。しかも1階はデザイナーにとって最も気の使う所であり、仕上げのグレードも高い。即ち手間が掛るのである。

大規模現場では作業動線は幾つも確保できるから、順番に仕上げていけるが、小さな現場は正面の入口だけであるから悩ましい。幸い筆者の配属された現場では動線が3カ所取れたのだが、それでもやはり1階の仕上げ作業は忙しいものとなってしまった。

床は花崗岩、壁は大理石で傷でもつけたら大変である。特に大理石は「石目」を合わせて石ごとに番号をつけて壁に張るから、簡単に取り換えがきかないからである。竣工間際の忙しさに比べ、赴任した当時のRC地中壁工事の時のゆったりとした時期を思い出し、あの時に1日でも工期短縮していけば良かったと、感じたのであった。

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現場勤務の思い出50-社員研修 [建築施工]

社員教育はどの企業でもあると思うが、筆者の勤めていた会社では基本的には「OJT」で、現場での上司先輩による指導を第一としている。なにしろ現場で現物の現実を見て教えるのが最も効果的であり、設計者や協力会社等とのコミュニケーションにしても実践で覚えるのが最も良い。

しかし配属されている現場は各人各様であり、筆者の様な大規模な事務所ビルから、地方の工場では大分内容が異なる。例えば共同住宅では鉄骨工事は無いだろうし、工場と高層ビルでは鉄骨はかなり異なる。又、仕上げのグレード(例えば石張とペンキの違い)も違うのである。

従って、現場だけに頼るのではなく、現場の違いからくる社員の環境を補完すべく集合教育が行われていた。主催は管理部門の技術部署である。施工ハンドブック(各種工事の技術解説書)の解説や、安全教育等であるが、3年目の筆者が参加した時には「仮設構造計算」の講義があった。

「仮設構造計算」は文字通り仮設物の構造計算なのだが、筆者が行ったタワークレーンを載せる為の本体鉄骨の補強等も含まれる。講義では1階に床スラブにコンクリートミキサー車が乗り入れる場合のスラブ補強であった。狭い敷地の場合、地下工事が終えて1階のスラブが打設されると、地上のコンクリート工事の際に、何時も道路使用をするのは好ましくないので、1階の床スラブにコンクリートミキサー車を乗り入れるのである。

1階のスラブに発生する応力計算をして断面算定するのであるが、技術部署の講師の先輩社員はコンクリートミキサー車のタイヤの接地部分の大きさを決めて、その幅に車両重量を等分布荷重として計算する方法を解説した。スラブの両端は連続梁効果があるので「半固定」にしていた。

筆者は何故荷重を集中荷重にしないのかを質問した。20㎝位の分布荷重にしても答えは3%も違わない。一方、支持条件を半固定に仮定するのは10~20%くらいの変動があるので、分布荷重の意味が無く、計算式が複雑になるから間違いやすい、と言ったのである。先輩社員は大した計算式では無いから間違えることは無い、などと正当性を主張したのだった。

講師はもう一人いて、ベテランの元構造設計部の人であった。その人は特にコメントしなかったのだが、やり取りの間、ずっと筆者を見ていた。後に筆者の上司になる人であった。

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現場勤務の思い出49-階段室の仕上げ [建築施工]

当現場の仕上げ工事は建築主の意向があって、仕上げ工事は別のゼネコンが行う事になっていた。筆者が所属するJVは躯体工事(耐火壁を含む)と外装工事、及び供用部の仕上げ工事であった。即ち仕上げは1階のEVホール、と特別避難階段(B4~24階、PH)である。筆者は階段室の仕上げを担当することになった。

階段室の施工は事務所ビルでは最も面倒な箇所である。事務所ビルの1階玄関ホールは見せ場でもあり、天井を高く、広い空間をデザインしたりするが、それはそれで大変なのだが、やり甲斐もあり、上手く出来た場合、その実績を社内で発表したりして情報が蓄積されていく。しかし階段室は大抵失敗があって、その貴重な教訓は中々資料として残っていないのである。

階段室は地下がRC造、地上は鉄骨造で、仕上げは耐火壁であるが仕上げが出来る工法で、ペンキ仕上げである。しかし踊り場の壁は金属パネルであった。これは階数を示すサインをいれたい設計者のデザインである。

階段室の施工は足場からであるが、今でこそ専用の足場が出来ているが、当時は「枠組み足場」と後は単管パイプ、足場板で組み立てるのである。これは経験が無いとなかなかうまく計画出来ない。細かく計画しないと鳶はいい加減に作ってしまう。

又、階段室は他の仕上げ作業員や設備作業員も通路として使う。流石に作業用に作った足場をくぐって他の作業員が階段として使う事は無いから、結局、2カ所ある階段は片方が仕上がるまで、他方は残しておかざるを得ない。工期は2倍掛ることになる。

問題は仕上がった階段室を他の作業員が使う事である。せっかく仕上げた壁等が傷つけられたしまうのである。階段は運搬にも使うから、長物を運ぶとよほど注意しないと壁を傷つける。では「養生」すればよいのだが、「ラミネート紙」程度では十分ではなく、むしろ乱暴に荷揚げに使われてしまう。かといって、全く養生しないのはどうかとも思う。今だったら、監視カメラをつけておくかもしれないが、全階に着けるのも大変である。

結局、踊り場のパネルはラミネート紙で養生したのだが、やはり傷がついてしまった。パネルの細かい傷は「タッチアップ」といって細い筆で傷隠しの塗装をする。今の自動車の傷補修と同じである。片側で約30階、両側で60の踊り場の金属パネルの傷探しとタッチアップは竣工式の前日まで続いた。

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現場勤務の思い出47-上棟式 [建築施工]

鉄骨工事の有終とも言うべき上棟式を迎えることになった。上棟式は建物の竣工後も無事であることを祈念して行われる。日本では地震、火災、台風と建物には多くの危険が襲ってくるから、長く無事でいられるようにお祈りするのは日本の古くからの習慣である。

当工事も本社ビルとなる高層ビルなので、当然上棟式が行われることになった。本社ビルなので建築主としては客先だとか、或いは監督官庁の役人、政治家など合計200人くらいを招待するらしい。かなりな規模の上棟式となってしまった。

しかし問題があった。それは生憎2月なのである。尤も寒い時期での上棟式では、天候もさることながら、長い時間招待者を寒気にさらしてしまう事になる。招待客には高齢の方も多いので、風邪でも罹ってしまったら申し訳ない。

そこで上棟式は室内で行われることとなった。高層ビルでの上棟式は大梁か、ある程度大きい小梁をタワークレーンでゆっくり揚重する。紅白の幕を下げた梁が大空に上がっていくのを招待客は眺める、というのがクライマックスなのである。

室内での上棟式は、法被を着た鳶たちが木遣り唄を歌いながら、小梁を台車に載せて会場の正面に運んでくる。そして会場の正面にまで来たら、小梁の端部のボルト孔に高力ボルトをつけて、代表の人たちがインパクトレンチでボルトを締めていく、というパフォーマンスを行ったのである。

多分、過去にもこの様なことが行われていたと思うが、4階で行われた会場は既に外装のガラスが入っており、ジェットヒーターで暖めていた。式が終わってから反対側のフロアでパーティーが開かれた。招待客も満足そうに見えたので、まずまずの上棟式だったのではないだろうか。

筆者の会社社長も当然来ており、建築主始め招待客の多くに挨拶をして回っていた。政治家にも挨拶していたが、知り合いも多かったようだ。建設業ではトップ営業が一番効果がある、と筆者が知ったのは現場が終わって、管理部門に異動してからのことであった。

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現場勤務の思い出47-揚重設備 [建築施工]

建設工事計画で重要なものの一つに揚重計画がある。何しろ建築物は目方あたりの価格が極めて安い。自動車は1tonで100~200万円はする。高級車であれば1000万円/tonである。建物は床面積当たり1tonくらいで、価格は面積当たり30万円位だから、自動車に比べて1/30~1/3である。飛行機等とはもう比較にならない。

従って建設工事では物を運ぶのが大変になってくる。建物の地上部に限って言えば、当工事では、タワークレーン2基、2tonの人荷用EV1基、2tonの荷持用EV1基であった。何れも建物内に設置した。

タワークレーンは鉄骨建て方が主で、他は雑荷(溶接機等が入ったコンテナなど)を行った。外装がPCCW(プレキャストコンクリートカーテンウォール)の場合にはタワークレーンを使用するが、当現場のCWはアルミ製であったので、スラブ上で走行使用できるクレーンを使った。

2tonの人荷用EV1基、2tonの荷物用EV1基は作業員と仕上げ材の運搬である。高層ビルの場合、人荷用EVは必須で、階段で何十階も登らせたら作業にならない。荷持用EVは横幅が4mくらいあるので、天井の下地材等長物を運ぶのに必要である。

大型高層ビルでは揚重管理に担当者をつける必要があり、当時は機械部からの社員が担当した。予め揚重するものの重量や個数を申請して、日時を決めておくのである。しかしこの揚重スケジュール管理は仕上げ工事や設備工事の材料に関しては、幾らでも事前に申請が可能である。

つまりゼネコンが作成した総合工程表(マスタースケジュール)、ないしは月間工程表に基づいて申請すればよいのである。しかし高層ビルの上部では鉄骨工事や床のコンクリート工事が行われているが、これらは天候によって作業予定の変更を余儀なくされる。

上層階工事で荷物用EVも使う事があるが、天候によってキャンセルになったりする。するとその分は曜日を下げて行う事になるのだが、揚重係にとっては全て時間割を決めた計画が作りなおしになるから、何時ももめ事になるのだった。筆者には担当者が別途業者である設備業者の味方に思えたものだ。

今では揚重専門の協力会社があり、スケジュール管理や荷物用EVへの積み込み、各階への荷降ろし、整理等を請け負っている。タワーマンションでは各住戸へ必要な材料全てを水平運搬している。合理化である。

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現場勤務の思い出46-学生の現場見学-2 [建築施工]

当現場でも所長の出身校であるW大の学生見学が行われた。タワークレーンは残っていて鉄骨は最終を目指しており、耐火被覆工事は佳境を迎えていた。又、仕上げ工事も始まってきていたから学生にとっては様々な工種がみられる現場であった。

前の工事は設計施工の単独であったが、今回の設計は別であり、JV工事である。見学の対応として設計者に頼むわけにもいかず、又、JVの構成会社にも頼めない。そこで最も若い筆者がかなりの担当をすることになった。

最初の建設業の一般的なことや、設計、工事概要は所長が説明をした。そして学生を引率して現場見学となった。引率したのは工務担当の係長と筆者である。鉄骨工事が行われている階は危険なので、既に床が出来ていて耐火被覆工事が行われている階より下を案内した。

前の工事で使われていた人荷用EVではなく、超高層用に開発された仮設のEV(昇降速度が早い)で見学会の上まで登る。人荷用EVの床はエクスパンメタルだから、下は透けて見える。しかし設置したのは外部では無く、本節のEVシャフトを利用したから、多分学生たちは恐怖を感じなかったであろう。

耐火被覆の工事中に学生を連れた筆者を見て、作業員たちは声をかけてくれた。筆者もW大の学生ですよ、と返答した。筆者は鋼板耐震の耐火被覆の耐火認定を取るのに苦労した(実際は対した苦労ではなかったが)ことや、耐火被覆プラントの階では、緑が見えるプラントを作ったことを自慢した。

又、耐火間仕切り壁が地震時に層間変形しても追従住出来る事、如何に防火区画が大事であることを説明した。水平区画では床スラブとアルミカーテウォールの裏に取りついている耐火ボードと床スラブの間に耐火被覆材を絨毯させて入る部位を解説した。これによって下階の炎が外壁のガラスを割って上階に伝わってくるのを防いでいる。仕上げ工事についても解説したが、担当では無いので熱心には説明しなかった。

見学が終わり、学生たちの質疑応答の時間になった。すると学生が質問したのは耐火被覆であった。筆者は得意になって、例えば耐火認定を取得した鋼板耐震壁の基準法37条の大臣の特別認定制度をはじめ、耐火時間の規定など詳しく説明したのだった。資料なし、原稿なしで話したので学生たちは慌ててメモし始めた。

細かい話を20分くらいしたので、流石に所長が後を引き継いで、他の施工的なことを分かり易く説明し、フォローしたのだった。しかし後で所長からは労いの言葉を貰った。

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現場勤務の思い出45-耐火被覆工事-5 [建築施工]

耐火壁は防火区画をする為に重要な部位である。防火区画とは火災が発生した時に延焼を防ぐために極めて重要な機能がある。防火区画には「面積区画」「水平区画」「竪穴区画」がある。「面積区画」は平面的に区画することで、建物の用途、規模、階数等によって100~3000m2ごとに防火壁を設ける事になる。

「水平区画」は上下階の区画であり、木造以外では一般にスラブは鉄筋コンクリートで作られるから、問題は無い。ただし外壁が燃えて上階に火が移らないよう、ベランダを設ける、外壁にたいしスラブを挟んで高さ90㎝以上を耐火構造にする、等のことを行う。「竪穴区画」とは建物には階段室や設備配管の為にスラブに開口が必要な為、開口部分を縦に煙突に防火壁で囲う区画である。

施工的に難しいのは「竪穴区画」である。それも設備配管、ダクトの為の区画であった。設計で設備配管、ダクトのスペースを十分大きくしてくれれば、問題無いのだが、配管やダクトから人間が入れないような隙間しか無い場合は困るのである。

その場合には、3面だけ防火壁を施工して、直ぐに設備業者に配管やダクトを施工してもらって、残った防火壁を施工することになる。この様な工事を「駄目工事」といって、本体、一遍に施工したいが、事情によって一部を残して施工することになる。そして「駄目工事」は手間が掛るのである。施工面積は狭いのだが、手順は同じことをしなければならない。竣工まじかで駄目工事が各階にあったら大変である。

さて竪穴区画にはまだ問題があって、防火壁を施工した後の点検が容易ではないことである。ダクトの周りに作った防火壁に孔が明いてないか、消防検査前に全部点検したのだが、懐中電灯を持って300カ所以上見て回ったのが思い出される。それでも消防検査時には緊張したものだった。

スタッドを建て、両面にリブラスを張って耐火被覆材を吹きつける防火壁は、表面の耐火被覆材は強度が無いから、容易に孔が明いてしまうのである。現場では足場材やパイプ、下地鉄骨等の材料が始終運搬されているから、耐火壁に当たると孔が明いてしまうのであった。今ではスタッドに耐火認定されたボードを両面に張る耐火壁が主流となっている。

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