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住宅の耐震補強-4 [大地震対策]

筆者がアドバイスしたリフォームでは、1階の居間10畳を7.5畳に変更するものであった。老齢の住居者が2階の寝室ではなく1階を寝室とする変更である。昭和55年に建てられた建物でもあり、この際耐震補強も兼ねて行うことにしたのである。

間仕切りを変更するリフォームはかなり大がかりとなる。問題は2階の床を支えてきた柱を切断することになるので、特に2階の柱を受けていた場合は大変である。

補強梁としては軽量鉄骨のC形鋼を使うことにして、2枚のC形鋼で撤去する柱の上部を挟みこむ方式にした。新たに寝室となる隣はダイニングキッチンとなるが、天井から補強の梁が見える(もちろん仕上げは行うが)ことになるが仕方がない。

挟み込んで支持させた後、柱を切断するのである。大工さんが4人掛かりで何とか施工できた。軽量形鋼材ではなく木製集成材でも補強は可能だが、重量は重く2階の床があるリフォームではクレーンが使えないので施工は難しい。
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                C形鋼による補強

寝室は7.5畳の洋室となるが、2階は910mmセットバックしており、元々3640㎜の梁間があり、2階には筋交いが入っていた。その筋交い、柱、床を支えるため、2階の床梁は120×330mmの松であったが、地震時に筋交いが有効となるには耐力が足りない。

つまり1階には2階の筋交い、柱を受ける新たな柱が元々必要なのであった。従って7.5畳の部屋は910㎜の袖壁を設けることにした。この袖壁は構造用合板と45×90㎜の筋交いを入れた耐震壁とした。壁量計算では4.5倍で算定される。

このため新たに基礎コンクリートを作ることになった。4.5倍の耐震壁は2階から見れば隅柱であり、地震時の引き抜き力は大きく、そのためにはダウンホール金物で固定する必要があるからである。

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              袖壁の基礎とダウンホールボルト

ダイニングキッチン部なども補強し、1階は強固に耐震化され、屋根を軽量化しただけで耐震補強はしていない2階部分より耐震性は高くなった。基準法の2倍近い耐震性があり、極稀な大地震の時でも1階は崩壊することはなく、おそらくほとんど無傷で済むと考えている。






















住宅の耐震補強-3 [大地震対策]

耐震補強には「耐震要素」である、「筋交い」、「耐震壁」を増設することである。筋交いは木造住宅では木製が使われ、30×90mm、45×90mmが主に使われる木材である。壁量計算では、30×90は1.5倍、 45×90は2.0倍に評価される。

耐震壁とは、柱と柱の間に板を打ち付けることで壁状の耐震要素となる。板としては、構造用合板(ベニヤ板)や、火山性ガラス質複層板等がある。構造用合板では厚みが9mmの場合2.0倍、火山性ガラス質複層板で12mmでは3.0倍として壁量計算される。

火山性ガラス質複層板は防腐・防蟻性に加え、防火性もあるので、最近の木造住宅では外壁下地材として多く使われている。なお内壁に使う場合、表面が平滑なため仕上げ材のクロス等を直接は貼れないため、更にプラスターボード9.5mmを重ねる必要がある。

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                火山性ガラス質複層板の例

筋交いや耐震壁を取り付けるためには天井、内壁(仕上げ材、下地材)、床材を撤去する必要がある。柱と間柱を現すだけでなく、土台木材、梁も露出させて筋交いなどを接合させる必要があるからである。

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                 内装材を撤去した状態

筋交いや耐震壁は建物の平面上で、X方向、Y方向バランス良く配置しなければならない。例えば道路に面したお店は、間口いっぱいドアや窓ガラスとなっており、耐震要素が無いことがある。これではいくら奥の方を耐震化しても道路側は揺れて、倒壊する可能性がある。「壁率比」を計算し、耐震要素がバランス良く配置されているか検討する必要がある。

開口を大きくしたい場合は、例えば「木造門型フレーム」という、鉄筋コンクリート構造や鉄骨造にある「ラーメン構造」の耐震要素がある。これは木造の柱と梁の接合部は「ピン支持」に対して、ラーメン構造では「剛接合」が出来るので、水平力に対して抵抗できるのである。






















住宅の耐震補強-2 [大地震対策]

瓦屋根の家の場合、最も有効かつ簡便なのが、瓦屋根を金属系の軽量屋根に替えることである。この方法は必ずしも安くは無く、雨季には雨漏りの問題がある。

木造住宅の耐震基準に「壁量」があり、床面積に対して「耐震要素」がどの程度必要かを定めている。必要な壁量は「耐震要素の壁の長さ」/「床面積」で計算する。耐震要素によって壁の長さは細かく規定されている。例えば柱間隔が910mmの間に30×90mmの筋交いを入れると倍率は1.5倍なので、910×1.5=1365mm=136.5cmの壁量となる。

この壁量をX方向、Y方向ごとに総量を計算して、床面積で除したのが必要な壁量となる。2階建の場合、

屋根が瓦の場合    1階の必要壁量 33cm/m2 2階 15cm/m2
屋根がスレート、金属  1階の必要壁量 29cm/m2 2階 11cm/m2

である。従って瓦屋根を金属系屋根に替えると、約10~20%の耐震性の向上となる。

お勧めの屋根は金属系の屋根への変更で、特に断熱材をサンドイッチした屋根材は瓦屋根の特長でもある断熱性や遮音性(雨音)がある。下記に製品例を示す。

http://www.nichiha.co.jp/loof/centerloof/kiwami.html

製品は種々出ており、リフォーム業者の意見も聞いて選定するとよい。なお撤去した瓦材は産業廃棄物となるので、適正な処理(運搬、処分)費用が必要である。



















住宅の耐震補強-1 [大地震対策]

建築基準法は昭和56年(57年施行)に大幅に改正され、地震力が2段階となった。建物供用期間中に遭遇する地震(30年に一度)に対しては建物が損傷しないよう「弾性範囲」に、200年位に一度の極稀な地震に対しては人命を確保するため「崩壊しない」ことを基準化した。

又、2000年の法改正では木造の建物に対して、筋交いの外れないような「筋交い金物」や、隅柱が引き抜けないように「ダウンホール金物」を使うこととしている。これは阪神淡路大震災で崩壊した木造家屋の調査で判明した原因の対策である。
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                 写真 筋交い金物

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                 写真 ダウンホール金物

従って1981年以前の建物は勿論、2000年以前の建物でも、もしリフォームを検討しているのであれば是非「耐震補強」の費用も見込むことをお勧めする。耐震補強は大掛かりなため、外壁の塗り替え程度のメンテナンスとは異なるのである。

住宅の耐震補強方法は大きくは3つに分けられる。1つは屋根を軽量化することである。熊本地震でも被害が出た建物は瓦屋根が多く、これは瓦が重く、その為地震力が大きくなってしまったからである。

2つ目は「耐震要素」である「筋交い」や「耐震壁」を増やすことで、地震力に対して抵抗力を増強するのである。基準法では「壁率」という基準があり、床面積に対して必要な「耐震要素」の数量を決めている。この壁率を大きくするのである。

3つ目は耐震補強ではなく、「制震装置」や「免震装置」を組み込む方法で、しかし一般住宅ではコスト等から難しいと思う。

















建物の構造-制震構造-4 [建物の構造]

今回の熊本地震では避難所に指定された建物で、損傷が大きく余震に対して危険なために使えないものが多く生じてしまった。それらは新耐震設計の基準による「耐震補強」されて建物であった。耐震補強のグレードはどのようであったか、検証が必要である。

建築基準法では建物の「重要度」という考えはないが(法は最低基準である)、耐震補強についての政令では用途係数として、基準法の1.0、1.25、1.5倍の地震を想定して行うのである。避難所が大きな損傷を受けては目的に合致していないのは明白である。

避難所は1.25倍のグレードなのだが、九州は全国に比べ過去の震災が少なく、地域係数として0.9倍の低減をしてよいことになっている。今回の地震は震度7の激震であり、もし地域係数で低減していれば、使えなくなる状態になってしまうのは考えられ、九州も含めて、今後の検討課題であろう。

「耐震補強」が必要な建物に対して、「制震構造」の考え方をもってすることも当然有効な対策である。

超高層ビルは固有周期が長いので、建設当初は固い地盤に直に支持させる直接基礎とし、軟らかい地盤で杭基礎は避けていた。これは軟らかい地盤は、下部の固い地盤に伝わった地震動が増幅されること、および増幅された地震動には長周期成分が多くなり、共振が起こると考えているからである。

しかし現在では、沿岸部の軟らかい地盤で杭基礎の超高層ビルが多く建てられている。地震時の地盤の挙動や、地盤と建物との連動について解析する技術が進んだからである。ただし解析技術がいくら進んでも、地盤定数をどのように設定(仮定)するかで結果は大きく異なる。

東日本大震災では超高層ビルが大きく揺れて、今後発生が予測される、東海。東南海、南海地震ではさらに大きく揺れると考えられている。その対策として、制震構造が有効とされており、オイルダンパーや金属系ダンパーの取り付けや、新宿三井ビルでは屋上に「アクティブマスダンパー:AMD」が取り付けられた。

首都の最も震災時に機能すべき都庁も制震補強(オイルダンパー)が行われている。現状でも倒壊することはないとされているが、振幅が2m以上となっては内部の機器は窓から飛び出すかもしれず、エレベーターは修理では済まない可能性は否定できないのである。

























建物の構造-制震構造-3 [建物の構造]

小堀が考えた制震構造は、耐震構造の基本的考えである人命確保のために建物の崩壊を防ぐ、というものではない。大地震後にも建物が使えること、さらには例えば銀行業務の継続性をも可能とすることである。

今や個人や企業の資産はすべてITのデータとしてしか確認できなくなっている。大震災後にそのデータを保管する建物が崩壊寸前であったら、データの破損も考えられる。そうなればその復元には多大な時間を要することになる。

勿論企業はそのことを考えて、データのバックアップとして、データの保存を各地に分散している。それでも重要なのがやはりデータセンターの事業継続性なのである。日本は今や大地動乱の時代である。東海、東南海、南海地震が連動して生じることも想定しなければならないのである。分散保存でも完璧は難しいのではないか?

制震構造は建築基準法の最低基準の通りにも設計でき、鉄骨量やコンクリート量を節減でき、コストメリットが図れる技術である。しかしそのような使い方は制震構造の本来ではなく、建物により多くの付加価値(事業継続性など)を与えるものとして使われるべきなのである。

IT社会の到来で、ITはもはや最重要な社会インフラの一つである。特に首都圏のITインフラが極稀に起きる地震に対して破壊されると、日本の経済が立ち行かなくなる。それは経済規模が第3位の国が世界に与える影響は多大なものとなり、日本国のみの問題ではないのである。

制震構造、免震構造は600~1000年に1度起きる地震に対しても、日本経済の継続性を可能とする建築技術として認知され始めている、と思う。


























建物の構造-制震構造-2 [建物の構造]

制震構造の主流はパッシブであり、エネルギー吸収の装置としては、オイルダンパー(油圧シリンダー)や粘弾性物質、金属などのエネルギー吸収要素を利用した制震壁・制震ブレース・制震柱などがある。オイルダンパー(油圧シリンダー)は免震構造にも使われているが、制震構造に使われるのは10cm程度のストロークであるのに対し、免震構造では1.5m以上の必要がある。

オイルダンパーは建物が変形するとシリンダー内のピストンが動き、オイルが流れる。この時、流れるオイルに粘性があることで地震エネルギーが熱エネルギーに変換、吸収される。

如何に効率的に熱エネルギーに変換できるかで、ゼネコン各社、メーカーが開発競争を繰り広げている。制震装置の中ではエネルギー吸収が最も高いが、又、最もコストが高い。

鉄板耐震壁を下の階から2枚立ち上げ、上の階からその間に1枚下げ、3枚の空隙に粘弾性物質を満たす装置も使われる。上下階の変位のずれにより鉄板耐震壁が動き、大きな摩擦が生じる。その摩擦力が熱エネルギーとなるのである。

この方式は制震構造の開発当初は多く使われていたが、現在の適用はほとんど無くなった。粘弾性物質の漏れやコストが掛ることが原因である。

金属が変形する際にも熱エネルギーが生じる。この原理を利用したのが金属ダンパーで、用いられるのは制震構造のために鉄鋼メーカーが開発した「低降伏点軟鋼」で、弾性域から塑性域まで大きく変形し、エネルギーを吸収する。

耐震柱の中間にこの低降伏点軟鋼を「ガセット」として結合するタイプと、ブレース材として低降伏点軟鋼を使うタイプがある。前者は耐震柱が必要なのがコストに影響するが、しかし大地震後に低降伏点軟鋼だけを取りかえることが出来る。

ブレース材として使うと、圧縮力により座屈するのを防止する必要がある。座屈防止のために鉄筋コンクリートで被覆したブレースは元々存在したが、低降伏点軟鋼にすることで制震効果が生まれている。

























建物の構造-制震構造-1 [建物の構造]

制震構造を建物に適用しようと最初に考えたのは小堀鐸二博士である。小堀は前のブログで触れた内藤多仲の女婿で棚橋博士の弟子でもある。地震動の非定常性、建物の変形が非線形性であることから,固い建物や柔らかい建物でも地震動は様々な周波数成分があるので「共振」の可能性がある。従って「耐震構造」では限界があるとの思いで、1960年に制震構造の必要性を発表したのである。

しかし制震構造の考えは当時の技術では実用化には至らなかった。その後小堀は京大を退官し鹿島建設に副社長で迎えられ、制震構造の実用化に向け多くのスタッフを率いて開発研究を行った。その成果が1989年に完成した京橋センタービルで、塔状比1:10というスレンダーな建物でも地震動を制することを実現した。

この時に使われた制震装置は「AMD:アクティブマスダンパー」と言われ、建物の屋上に建物重量の3%程度の錘を載せ、地震時の建物の揺れを検知して錘を動作して揺れを低減させるものである。このような技術が1962年当時には出来なかったのであった。

制震構造に対して、タワーに取り付ける風揺れ対策に「制振構造」がある。どちらも振動をコントロールするものであるが、小堀は風揺れの振動より遙かに複雑な地震動に対しての制震構造は制振構造より概念が広いと主張した。

建築界では風対策のみでなく、適用の多い地震に対しても「制振構造」と称して多く使われているのは小堀にとって不本意であった。しかし阪神淡路大震災、東日本大震と経験し、一般の人が益々地震に関心を持つようになって、制震の方が地震対策と分かり易く、徐々に制振でなく制震が使われるようになっている。

制震構造には概念としては免震構造も含まれるが、ここでは免震構造を別にすると、「アクティブ制震」と「パッシブ制震」に分けられる。前者は京橋タワーのように、建物に取り付けられたセンサーで地震動を検知してダンパーを働かせるのであり、後者はエネルギー吸収装置を取り付けた構造で、建物の変形や速度に連動して(センサーは無い)地震力を減衰させるものである。

当然アクティブ制震の方が技術的に高度であるが、費用がパッシブに比べ高いこと、定期的なメンテナンス(エレベーターの点検ほど頻繁ではない)が必要なことである。アクティブ制震の中で「可変剛性構造」はブレース付きの建物で、建物に伝わってくる振動に対して最も有効な剛性にするよう、ブレースを利かせたり解放したりするもので究極の構造と言えるが、まだ商業化(3階建ての実証建物は鹿島が作っている)までは至っていない。

























建物の構造-免震構造-3

免震構造の弱点は上下動に対しては免震の機能をしないこと、長周期地震動には「共振」してしまうことである。上下動については水平方向の震動より小さいことからあまり問題とはならない。

免震構造では免震装置だけの場合、地震動を受けるといつまでも揺れが続くことから、減衰を早める必要がある。それを抑えるのが「ダンパー」である。ダンパーとは地震エネルギーを吸収する装置で、免震装置とセットで設置されている。積層ゴムの中心に鉛プラグが入ったもの、油圧シリンダーのもの、鉛でループ状をしているものなどがある。性能的には油圧シリンダータイプが良いと思うが、コストが掛かるので、台数を減らすために他のダンパーと組み合わせることもある。

ダンパーについて下記にHPを記す。

https://www.kyb-ksm.co.jp/products/vibration_control/vibration_control-0012.html

ダンパーは短周期地震動に対しての減衰を主に考えられていたが、東日本震災での長周期地震動が振幅は小さくとも影響が出ることが超高層ビルで明白となったので、今後は長周期地震動に対する減衰性能について一層の検討進められている。

一方、免震構造の最大の利点である震源地近くの激震地では揺れが1/3程度となることで、これは免震層の上部建物には大きな震動は生じないことを意味する。従って歴史的建造物で耐震補強が難しい場合には、東京駅のように既存建物の免震化工事が行われている。

東京駅は関東大震災でも被害は少なかったが、経年劣化を考えると次の地震では安全とはいえない。かといって耐震補強では柱に鉄板を巻いたり、筋交いや耐震壁を増設したりと、補強部分が露出してしまい、文化的価値は損なわれる。

又、耐震補強では強度アップにも限度があるため、大地震後の使用を可能とするまでの耐震性能は難しい。その様な病院や避難所となるような公共建物にも免震化工事が行われている。

























建物の構造-免震構造-2 [建物の構造]

免震構造で最も使われている「積層ゴム」の原理は、ゴム(天然)が圧縮力や剪断力に対して柔らかい性質による。軟らかいことから振動が伝わりにくく、洗濯機などの脚に使われている。

しかし建物は非常に重いので、ゴムのままだと圧縮力で大きく収縮してしまう。「ポアソン比」が0.5(体積変化なし)に近く、縮んだ分は横に広がる。そこでゴムを薄い層にして、間に薄い鉄板を接着しているのが積層ゴムなのである。

このような積層にすると、圧縮力を受けても収縮量は少なくなる。鉄板が横に膨らむのを制限しているからである。

しかし剪断力に対しての歪量は、ほとんど変わらないことが積層ゴムの特徴で、つまり水平方向には「柔らかい」ので、地震力(水平動が主で上下動より大きい)が伝わらないのである。

積層ゴムのHPを下記に示す
http://www.bridgestone.co.jp/products/dp/antiseismic_rubber/feature.html

超高層ビルは「柔構造」と言われるが、免震構造も柔構造なのである。30階建ての建物の「固有周期:建物の頂部を押して離した後揺れる周期」はおよそ3秒くらいであるが、免震構造もおよそ3秒くらい(最近は4秒くらいまで)の固有周期である。

強震地震計は現在日本で2000個所設置されているが、その地震波形を見ると複雑な振動をしている。地震動は様々な周期の振動が含まれており、その中で大きな振幅をしている波形を「卓越周期」という。

建物に被害を与えるのは周期が0.5~5秒くらいであるが、卓越周期としては1秒程度とされてきた。超高層ビルの固有周期は3秒以上だから、建物は慣性の法則により、足元の地盤だけが揺れ、建物自身はあまり揺れない、という「柔構造」であった。

しかし東日本大地震では、東京や関西まで地震が伝わり、超高層ビルが頂部で左右に(振幅)1m以上揺れた。これは地震動に含まれる「長周期成分」によるもので、加速度、速度の値は大きくはないが、長周期の超高層ビルは「共振」したのである。共振とは建物の固有周期と同じ周期で力を加えると、だんだん建物の振幅が大きくなる現象のことである。

例えばお寺の釣鐘(振り子)も振り子の周期で押し続けると、たとえ小さな力でも大きな振幅になっていく。釣鐘を吊っているところから、釣鐘の真ん中(正確には重心)までの寸法が2.25mであれば周期は約3秒である。3秒に1回押せば、やがて大きく揺れるであろう。